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2011.01.01


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あぐいぶらり旅
〜建造物を見る(弘誓院)〜

シリーズ 阿久比を歩く 139




旧本堂に取り付けられていた“鬼瓦”


鳥衾に取り付けられた動物の正体はウサギ?

「『卯之山うのやま』というくらいですから、忘れたころに野ウサギの姿を見ることがあります。山にエサが無くなると人里に下りて来るんでしょうね。畑の野菜を食べてしまうこともありますが憎めないかわいらしい顔ですよ」と、老住職の目元が緩む。

2011年の干支は「卯」。卯年にちなみ、ウサギと縁の深い、卯之山地区の「兎養山とようざん弘誓院ぐぜいいん」を訪ねた。

—天台宗開祖伝教大師最澄は、全国行脚の際、阿久比の地に立ち寄り、下ノ池のほとりにさしかかる。その時、池の中央から金色の光が立ち昇り、どこからともなく現れた白ウサギが光めがけて飛び込み、一寸七分(約5cm)の阿弥陀仏を口にくわえて大師の前に運んできた。その出来事を聞いた都の帝は大変喜び、勅願寺を建立し、「兎養山とようざん長安寺ちょうあんじ」と名付けるように命じる。大師は阿弥陀如来像を刻み、ウサギが運んできた仏をその胎内に納めた。寺の周辺は、「兎養山」の山号にちなみ「兎之山(うのやま)」と呼ぶようになる—

天台宗の長安寺は現在の弘誓院の前身で、七堂伽藍しちどうがらんがそびえ建ち、50余りの坊舎が立ち並ぶ広大な寺院であったと伝えられる。平治の乱や織田信長による焼き討ちなどで荒廃し、再建が繰り返された。天台宗から浄土宗へと改宗され、現在の地に「兎養山弘誓院」が開山されたのは天文2(1533)年。山門から奥をのぞく。寄棟造よせむねづくりの屋根に真新しい瓦がのった本堂が映る。平成22年3月に新しく建て替えられた本堂がまぶしい弘誓院の境内に足を踏み入れる。

「面白いものを見せてあげますからこちらへどうぞ」と老住職に声を掛けられ、古い瓦が集められた場所に案内される。

瓦は、安永4(1775)年に建立されたとされる、旧本堂の屋根に取り付けられていた“鬼瓦”と“鳥衾(とりぶすま)”。鬼瓦の上部に1本飛び出した巴瓦ともえがわらのことを「鳥衾」と呼ぶ。鳥がよく止まる場所なのでそのように呼ばれるようだ。

「巴の部分が取れてしまっていますが、これが鳥衾です。珍しい動物が瓦に付いているでしょ。何だと思います?」老住職が私と友人に問い掛ける。「もしかしてウサギですか?」。

次号に続く。