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2010.11.01


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あぐいぶらり旅
〜建造物を見る(蓮慶寺)〜

シリーズ 阿久比を歩く 135




“反り”の曲線が美しい蓮慶寺の屋根


天井が膨らむ“格天井”

大古根地区の蓮慶寺を友人と2人で訪ねる。県道阿久比半田線を南に進む。植大駅西信号を過ぎ、しばらく行くと、右手前方に寺の大きな屋根が見えてくる。

参道の長い坂を上りきり、蓮慶寺に着く。境内に入ると、東向きを正面に、町内寺院では最大の本堂が建つ。

遠くから見えていた屋根を目の前にすると、すぐ近くに空があるような錯覚を感じるほどの壮大さがある。勾配の急な屋根造りで、“反り”の曲線が美しく、棒状の瓦が流れ落ちてくるようだ。

住職が声を掛けてくれ、本堂を案内してくれた。

石坂山せきはんざん蓮慶寺は真宗大谷派に属する。本堂は文化8(1811)年に“落慶”。内部は内陣ないじん外陣げじん大間だいまに分かれる。

内陣中央には本尊「阿弥陀如来」が置かれる。上を見上げると、屋根付きドーム球場のように天井が膨らむ。「二重折上げ小組格天井こぐみごうてんじょう」と呼ばれる珍しい建築様式が使われる。

外陣は狭く、広い大間は門徒が集う“道場”で、四隅にはケヤキの太い丸柱が立つ。

「この寺の建造には『横松大工』が深い関わりを持っていることが最近分かりました」と住職。

本堂や大門(山門)再建の棟札には、知多地方の山車造営に深く関わった横松大工の名が残る。本堂の大工棟梁は「横枩 清兵衛」、大門再建棟梁には「横松 江原新助」の名が記される。

横松大工は、神社や仏閣の建築を主とした「堂宮大工」。木組みだけで造り上げる卓越した技術は非常に評価が高い。江原新助は明治24年、半田市亀崎「潮干祭」で海浜に曳き下ろされる石橋組の山車「青龍車」の建造(明治24年)に携わっている。

「身近に、すご腕の大工さんがいたことを意外と皆さん知らないでしょ。後世に名を残す横松大工の手が加わっていたことは寺の自慢です。本堂建立から200年。ところどころ傷みが目立ち、修理が必要なんですよ」。古寺を守っていかなければという住職の言葉に力がこもる。

本堂を後にする。境内の鐘楼堂を眺め友人が言う。「お寺の鐘をおもいっきり鳴らしてみたいです」。「どうして?」。「なんとなくです。秋だからですかねえ」。「えぇ?…」。