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2010.10.15


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あぐいぶらり旅
〜建造物を見る(横松地蔵堂)〜

シリーズ 阿久比を歩く 134




重厚感漂う瓦が乗る入母屋造の屋根


地蔵堂の中に安置される地蔵と仏像

田んぼのあぜ道に、ヒガンバナが咲く。「暑さ寒さも彼岸まで」。昔の人はうまいことを言う。彼岸を過ぎて暑さも少し和らぎ、めっぽう過ごしやすい季節となった。横松地区の地蔵堂を友人と2人で訪ねた。

県道南粕谷半田線を横松交差点南の信号から東に入った、横松地区のメーンストリート沿いに3つの地蔵堂が存在。一番西にある地蔵堂を見る。

木造瓦葺入母屋造で江戸時代後期の建築。面積が約20m2で、屋根には重厚感漂う瓦が乗る。南北の棟の両端には鬼瓦。鬼瓦の邪気を取り除くためか、以前白沢地区で調べた“にらみ返し”(鍾馗しょうきの人形)が、南北の向かいの民家に一つずつ見られる。

地蔵堂近くを通りかかった男性に声を掛ける。いわれなどを聞いてみた。

「わしのうちもそうだけど、この辺の人で、『地蔵さん』に“おぼくさん”をあげとるよ」

地元では地蔵堂のことを「地蔵さん」と呼び、近くに住む人々で順番に、ご飯と水を供える慣習が続く。毎年8月17日の夕方、お堂近くに住む女性たちが集まって供養が営まれる。

地蔵堂の扉を開けてもらい、中を見る。地蔵と高さ10cmほどの数多くの仏像が安置される。仏像には亡くなった先祖の名前が書かれているようだ。

男性と話をしているうちに、近所の女性たちも会話に加わる。

「夏、みんなが集まるときは、お寺の“おっさん”に、お経をあげてもらっとったけど、今は自分たちで、テープをかけて、お参りしとるよ。明日は私のところが“おぼくさん”をあげる番だわ」

「地蔵さんを大切に守っているんですね」と私たちが問い掛けると、「分からんけど、なんとなくねえ。まあ、昔からやっとることをなかなかやめられんもんね。元気で健康に暮らせているし、近所も仲良くできるしねえ」。集まった人たちがお互いに顔を見合わせた瞬間、高らかな笑い声が地蔵堂の周りに響き渡った。

いつの間にか、男性1人と女性3人、私と友人の6人が会話を交わしていた。しばらく皆さんの話に耳を傾けた。