2010.10.01
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旧阿久比村役場を探しに友人と2人で出掛けた。宮津地区の西森下地内で、宮津橋東付近に現存しているらしいので、近くに住む人に訪ねながら目的地へ向かう。
「『役場があったげな』と、話は聞いとる。昔、庄屋さんたちがおったあの辺だ。宮津橋拡張で建物は取り壊されたが、近くに駐在所もあったなあ」と長老は言う。
旧阿久比村役場は、明治39年に東阿久比村、上阿久比村、阿久比村の3村が合併したときの村役場で、大正15年に阿久比神社南へ庁舎が移転するまで使用された。その後、役場は昭和34年現在地に移転する。
県道南粕谷半田線から西に向かう細道を歩く。目の前に、黒塗りの高い塀。その奥には日本建築の住居と蔵が並ぶ民家。後方に、宮津団地の各棟が立ち並ぶ光景が目に映る。
長老が教えてくれた場所に着く。雑木林からは猛暑の終わりを告げるかのようにツクツクボウシの鳴き声。畑仕事をする男性に声を掛ける。
「昔の村役場を探しているんですが」。「わしが今、住んどる、ここだが」。「ここですか?」
旧役場は民家となっていた。平家建ての古い建物で、漆喰が塗られた壁は、ところどころはげて、土壁がむき出しの部分もある。役場であったとは、言われてみなければ分からない。周辺の建物の雰囲気から、長老が言っていたように、一昔前は人々が集まるにぎやかな場所であったことがうかがえる。
話してくれた男性は80歳。西向きに入り口があったと説明を受ける。家に残っていた当時の写真を見たことがあると言う。
「村長は、鼻の下に長い立派なひげをはやしとった。かすりの着物を着た女性の事務員が3人〜4人いて、床を引きずるような長い髪の毛だったような気がする」
私たちの先輩職員の話だ。少ない職員でいくつもの仕事をこなしていたようだ。
「あんたら役場で頑張って、ええ仕事やってくれや」と男性からエールを送られる。身の引き締まる思いで、旧阿久比村役場を後にした。
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