広報 あぐい
2010.09.01
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あぐいぶらり旅 
〜建造物を見る(宮津熱田社 常舞台力神)〜

シリーズ 阿久比を歩く 131

 



境内を見守る“力神”



顔の取り外しを試みる男性

宮津地区熱田社は、盆踊りの準備で人の動きがせわしい。暑さ厳しく、セミの鳴き声も騒がしい。そんなにぎやかな状況を、常舞台正面上部に取り付けられた一対の「力神りきじん」が見守る。

木造瓦葺入母屋造いりもやづくりの常舞台は、弘化4(1847)年熱田社境内に造営され、原型を残す。昭和30年ごろまで村芝居が盛んに行われ、多くの人々が観劇をした場所。力神も弘化4年に作られ「寄木彫」であると記録に残るが、製作者は不明。

2体の「力神」彫刻が建具に腰を下ろす。眼光鋭く、筋肉隆々。前かがみになり、常舞台のはりを片腕で、下から力強く持ち上げるような姿は勇ましい。

「僕は『キン肉マン』のマンガが大好きなんですけど、力神はどことなく似ているところがありますよね。好きになりそうです」と、友人が物を持ち上げるようなポーズを取り“力神”の真似をする。見るからに貧弱だ。「そのポーズキン肉マンと力神に失礼だよ」と私が返す。

力神彫刻は、知多地方の山車や神社の山門や本殿に施される。寺の山門で、仁王像や金剛力士像が門番をするように、「力神」は“神”が関わる場所の見張り役のようだ。

境内で作業をする長老たちに力神について尋ねる。

「常舞台と力神の組み合わせは今までに見たことがない。なんであの場所にあるかは知らんなあ。顔が取り外せると思ったで、中に何か書いてあるかも知れん。1回見てみるか」

男性が準備の手を休めてくれ、フォークリフトの荷台に乗り、顔の取り外しを試みてくれた。しかし簡単には取れない。貴重な彫刻を傷つけてはいけないので、確認はあきらめることにした。

「我々、長く宮津に住む者も知らんことばかりだよ。何か古い記録が出てきたら、また教えてあげるわ」と長老らが笑う。

製作者は誰なのか。常舞台と力神の関係。多くの謎が残る。〈本当のことは“力神”のみぞ知る〉。

「そう言えば、力神のぷくっとしたところ、生後2カ月の息子にも似てます」。「将来はキン肉マンにさせたらどう」。「……」。



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