広報 あぐい
2010.8.15
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あぐいぶらり旅 
〜建造物を見る(千木ちぎ鰹魚木かつおぎ)〜

シリーズ 阿久比を歩く 130

 



5本並ぶ堅魚木



内削ぎの千木(中央)


神社建築の象徴といわれる「千木ちぎ」と「堅魚木かつおぎ」を確かめに、板山地区の熊野神社を友人と2人で訪れた。

千木は神社本殿の屋根の両端に交差して立つ飾り。堅魚木は棟木の上に直角になるように何本か平行に並べた装飾の木で、円柱状で鰹節に似ていることが「堅魚木」の名前の由来であるといわれる。

千木には先端を地面に対して水平に削った「内削うちそぎ」と、垂直に削った「外削そとそぎ」の形があるようだ。インターネットで調べると、千木が内削ぎになっているのは女神、外削ぎになっているのは男神がまつられると紹介される記述が多い。また、堅魚木の数も偶数は女神、奇数は男神がそれぞれまつられるとのこと。

ちなみに伊勢神宮の“内宮”は、「内削ぎ」の千木、堅魚木は十本で女神の「天照大神あまてらすおおみかみ」がまつられる。「豊受大神とようけのおおみかみ」がまつられる“外宮”は「外削ぎ」の千木で、堅魚木は9本。男神がまつられているかと思いきや、実は豊受大神は女神。すべての神社が先述の法則にはあてはまらないようだ。

熊野神社境内で写真を撮る男性がいた。写真を撮っている理由を尋ねると、「拝殿が新しくなり、記念誌を作るためだ」と言う。真新しい拝殿からヒノキのにおいが境内に漂う。熊野神社では20年に一度、境内の建物の修復作業などを行う。地元では“遷宮”と呼び、今年はその年に当たる。拝殿奥にある本殿は、20年前の“遷宮”行事で建て替えられたものだと男性が教えてくれた。

銅板葺きの屋根には、内削ぎの「千木」が飾られ、5本の堅魚木が並ぶ。熊野神社は紀州熊野三所権現を分祀ぶんししたのが始まりとされ、現在では、いくつかの“神”が合祀ごうしされている。

「千木の形からすると、女神さんがまつられているはずだよね。だけど堅魚木の数は奇数だとすると男神か?」。私が首をかしげる。「そう言われるとそうですよね。まあ、いろいろな神様がいるということじゃあないですかねえ」と友人。

「整いました。堅魚木と掛けて、うどんに振り掛ける鰹節と解きます」。「その心は」。「どちらも上に乗っています」。最後も友人がうまくまとめた。セミが騒ぐ境内を後にした。



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