広報 あぐい
2010.5.15
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あぐいぶらり旅 
〜石造物を巡る(植・大古根コース 5)〜

シリーズ 阿久比を歩く 124

 



手前が“メンヒル石”奥が神明社拝殿



しめ縄が巻かれる“メンヒル石”


神明社南側から境内へ向かう参道が2つある。1つは石段、もう1つは“女坂”と呼ばれる緩やかな坂道の参道。両参道を上り切った接点に「メンヒル石」がある。

友人が石段、私は女坂から上り、「メンヒル石」を目指す。「息が合えば、同時に目的地点に着けるはずだと思うけどねえ…。」

お互いが意識してか、2人がほぼ同時に目的の場所に着く。「気が合いますね」と友人。「もう5年、君といっしょに歩いているからね。一心同体だよ」。「ちょっと気持ち悪いですね(笑)」。

四方を石柱で囲まれた中に「メンヒル石」がある。2人で持てば、なんとか運べるほどの大きさ。石の周りには、しめ縄が巻かれる。

メンヒルを事典で調べると「ケルト語で『長い石』を意味し、先史時代の巨石記念物の一種」とある。事典でいうメンヒルとは少し異なる。

昭和初期に人類学者の鳥居竜蔵博士が神明社を調査した際、境内にある石物を“メンヒル”と呼んだことから、「メンヒル石」が俗称となった。

神の鎮座する場所を「盤座(いわくら)」といい、「メンヒル石」は、その盤座。古代のご神体といわれ、祭りの際、神が降りてくる霊石だとされる。

現在の神社には、拝殿が設けられ、参拝者は、その拝殿に向かい手を合わせているが、神の宿る盤座に手を合わせるのが本来の姿のようだ。

古代から伝承される神秘的な「石」。少し前に祭礼が行われ、その石に神が降りてきたばかりだ。盛大な祭りを楽しんだことだろう。メンヒル石に手を合わせ、境内を去る。私が石段、友人は女坂を下る。

「地区の社守をやっているときに、あなたたちが持っている『阿久比の石造物』でわしも、いろいろなことを勉強させてもらった。“メンヒル石”はそれを読み、知ったよ。わしの歳でも、知らないことばかりだから、若い人たちは何も知らないだろうな」。神社下で出会った78歳の男性と会話する。

「昔は、口伝いで伝わってきた話も、高齢者が一人二人と亡くなっていくと、なかなか後世にまで伝わらない時代になってきたからなあ。あなたたちも頑張っていろいろなことを調べてくれよ」と、帰り際に宿題をもらった。



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