広報 あぐい
2010.2.15
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あぐいぶらり旅 
〜石造物を巡る(阿久比・椋岡・矢口・高岡コース 4)〜

シリーズ 阿久比を歩く 118

 



胸の前で子ども抱く“子育地蔵”



ユニークな顔立ちの“大沢不動尊”


南部工業団地の敷地内にある瓦工場を横目に、少し行った場所で、簡易なコンクリートブロックに納められた「大沢不動尊」を発見。

辻地蔵で、常滑の大野と植大につながる「山道」を知らせる役目をしていたようだ。

今まで見てきた地蔵とは少し違うユニークな顔立ち。体全体の割合からすると顔が大きく、面長の顔で、ほおから下の肉付きがいい。スカートのようなものを身にまとい、足が短い。

「足が短いのは僕と似ていますが、顔は…」。私の方を見て友人が言う。確かに顔は私と似た輪郭。正月、家族で撮った写真に写る、顔が膨れ上がった自分にそっくりだ。「……」。言葉がない。

地蔵に顔が似たということは新春から縁起がいい。気を良くして、次に観音寺を目指す。

観音寺へ続く石段手前のお堂に「観音寺地蔵尊」がまつられる。失礼して扉を開かせてもらう。

中には高さが30cmほど、胸の前で子どもを抱くように見える小さな地蔵が立つ“子育地蔵菩薩”と記された木札には、「家庭内暴力、登校拒否など子どもの悩みを良い方向へ導く」地蔵であることが説明される。

「夏ごろにコウノトリが、子どもを運んでくれることになりました」と友人がもじもじと横で話す。突然の吉報。今年の初めから意味深な発言をして、にやついていた訳が分かった。友人の照れくさそうなしぐさからうれしさが伝わってくる。

「よかったなあ。おめでとう。子育ては難しいよ。父親に甘えてくるのは、母親にしかられたときだけだ」。祝福の言葉を友人に掛けつつ、子を持つ先輩として現実の厳しさも教える。「迷ったときは、ここに来ます」と言葉を残し、石段を上り観音寺境内へと進む。

ー知多路の春は知多四国弘法参りで始まるー。この寺は知多四国八十八カ所霊場の十七番札所。岡崎から来たという夫婦が、寺を訪れた証しである朱印を奉納経に押してもらっている。

「昔、井戸に捨てられてしまっていたお地蔵さんを地元の皆さんが、拾い出しておまつりしたんですよ。子どもを抱く姿から、『子育地蔵』と呼ばれるようになりました。親御さんらが子どもの成長を願い、手を合わせにみえますよ」。女性の住職がやわらかい口調で話してくれた。

「安産にはご利益ありますか?」友人が住職に尋ねる。「もちろんです。どうぞお参りください」。石段を下り2度目の参拝に付き合った。



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