広報 あぐい
2009.10.01
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あぐいぶらり旅 
〜石造物を巡る(坂部・卯之山コース 1)〜

シリーズ 阿久比を歩く 109

 



幼子を抱く“子安地蔵尊”



塚の前に立つ石像“お塚さん”


坂部・卯之山コースの初回は、「子安地蔵尊」と「お塚さん」の2つの石造物を探しに出掛けた。

文化財調査報告の地図では、子安地蔵尊のある場所が阿久比坂部郵便局付近に示されているので周辺を探す。

細い坂道を上る途中、民家の庭で草取りをする男性を見掛け、声を掛ける。事情を説明すると、「この道を進んで、左へ曲がったところにいるお地蔵さんのことかなあ?」。手を休め、親切に地蔵が置かれる場所まで案内してくれる。

瓦ぶきで、板壁の立派なお堂に、地蔵が安置される。格子越しに地蔵を眺める。地蔵は静かに目を閉じる。赤い布で覆われた胴体の一部から、まりのようなものを抱きかかえる幼子の姿が見える。その子を地蔵は抱く。

家を指さしながら「あそこのおばあさんがよく世話をしているから聞いてみるといいよ」と教えられ、男性と別れておばあさんを訪ねる。

「道路が新しくなったりして、私が知っているだけで、居場所が4回変わったよ。子どもを守ってくれる“お地蔵さん”で、昔から手を合わせる人が絶えないよ」

その言葉から「子安地蔵尊」であることを確信する。毎日、お茶と水を供えるおばあさん。2月と8月には近所の人が集まり、百万遍の念仏を唱えるとのこと。子どもたちの健康や幸せを祈る気持ちは、いつの時代も変わらない。

次に細道を南に向かい、東新畑地内の畑の中央に立つ「お塚さん」を見る。

野ざらしの小さな石造は、こんもりと土砂が積み上げられた塚の前に置かれる。塚は『阿久比の昔話』にも登場する人物で、月宮姫の墓であるといわれる。通称“お塚さん”と呼ばれる石造は、安政年間の開墾で塚が壊された後に安置された観音像。

18歳で亡くなった月宮姫。とても美しい姫であったらしく、塚に祈ると「美人になれる」という伝説が残る。

「つい最近も、妊婦さんがお祈りしていたのを見掛けたよ」と近くに住む女性の話が聞けた。

友人が「今日は、子宝に恵まれることと、女の子が生まれたら美人になれるようにとお祈りしたからきっと…ですよね」と含み笑いを浮かべながら私に話し掛ける。「女の子は父親に顔が似るらしいよ。君の顔からすると美人というのはどうかなあ?」と返した。



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