広報 あぐい
2009.08.15
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あぐいぶらり旅 
〜石造物を巡る(草木コース 1)〜

シリーズ 阿久比を歩く 106

 



口を開けた「狛犬」



道しるべの役割を果たした
「乙ヶ脇地蔵尊」


今回から草木地区の石造を巡る。梅雨もなかなか明けずに、蒸し暑さと湿気でじめじめした日が続く。鳴くセミもどことなく元気がない。

「乙ケ脇地蔵尊」を探すために、阿久比町と知多市の境界を進む。しばらく道なりに行った場所で小さなお堂を発見。三方をトタン板に囲まれた簡易なお堂の中に「地蔵尊」が安置される。

地蔵の胴体は、布の前掛けで着飾れる。失礼して前掛けの下を見る。「右おおの道 左くさぎ道」の文字が両脇にそれぞれ刻まれているのを確認。文化財調査報告では、「草木鶴若に至る山道の三差路にあり、正盛院裏の山の背より草木部落中央におりる昔の道の辻地蔵である」と解説。

地蔵の周りは雑木林で薄暗い。雨上がりで足元はぬかるみ、ぐちゃぐちゃ。小さなカエルがピョンピョン飛び跳ねる。私たちの耳元では、「ブーン、ブーン」とやぶ蚊がいやな音を響かせる。

わずかな時間で私は首筋、友人はひじをやぶ蚊に刺された。「お地蔵さんはやぶ蚊に刺されなくていいよなあ」。「やっぱりそう思いますか?」。このままここにいると、大変なことになるので、来た道を戻る。

次に多賀神社を訪れ、「狛犬(こまいぬ)」を見る。社前の一対の狛犬は昭和5年、草木地区の初老者が厄年記念に寄進したもの。狛犬が置かれる台座の裏側には、寄進者9人の名前が刻まれる。

狛犬は神社前などに置かれる、獅子に似た獣の像。魔よけの役割を果たし、向かい合わせに口を開いた狛犬と口を閉じた狛犬の阿吽(あうん)の一対で置かれるようだ。

拝殿に向かって右の狛犬は大きく口を開き、鞠(まり)の上に左足を乗せ、左の狛犬は口を閉じ前方に子どもを従える。

多賀神社と厄年は縁が深い。知多半島で厄年を迎えた人の多くは、彦根の「多賀大社」(滋賀県)へ厄払いに出掛けると聞く。例外にもれず昨年私も同年者と出掛けた。

いつごろから、この地方の人々が滋賀県まで厄払いに行くようになったのだろうか。年配の方に聞いても、はっきりとした答はない。

「皆さん怖い奥さんから1日だけ開放されるために行くんじゃないですか?」と友人がにやけて言う。「……」。心なしか険しい顔の狛犬の表情が緩んだような気がした。



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