英比小学校の児童が育てたヘチマが校庭を囲むフェンスの向こうに見える。はるか先で、かばんを背負った子どもたちが運動場に集まる。帰る方向が同じ低学年がグループを作って下校するための準備をしているようだ。先生の大きな声に促されて子どもたちが整列を始める。
「遠くからだと、かばんが歩いているのか、子どもが歩いているのか分からないですね。あのくらいが1番かわいいころじゃないですか」と友人が私に話し掛ける。「そうかもしれないな。小学校1年生の娘が、『今年もサンタさん来てくれるかなあ』って、前歯の2本抜けた顔でしゃべる表情は、かわいいよ」。「サンタさんか。宝くじの3億円の当たり券がもらいたいなあ」。「君はかわいくないね」。
英比小学校は、来年開校100周年を迎える。校歌の中で、阿久比の郷を開いたと言われる「英比麿」が「その名もゆかし英比麿」とうたわれ、“英比”の名を継ぐ学校だ。
校内に足を運ぶ。昨年新しく生まれ変わった体育館は、なだらかな曲線を描くアーチ型の屋根が印象的。館内から子どもたちの声やホイッスルの音が響く。
この学校では花壇作りに力を入れている。県教育委員会などが主催するFBC(フラワーブラボーコンクール)に毎年応募するなど、人の目を楽しませてくれる美しい花壇を作り出す。季節がら土作りの準備で花壇はシートに覆われている。来年はどういった花壇を演出してくれるのか今から楽しみだ。
体育館の前を通り、下校する子どもたちの後からついて行く。何やら騒がしくしていたので、話し掛けてみると、セミの抜け殻を見つけたらしい。大人なら見過ごしてしまう小さなことも、子どもたちにとっては大発見のようだ。
しばらく話をしながら一緒に歩く。「おじさんたちこの辺で帰るね」。福住新橋付近で別れを告げようとすると、「あの橋まで、一緒に来てよ」と子どもたちに腕をつかまれる。気分を良くして福住橋まで歩く。
子どもたちがあどけない笑顔で「またね」と手を振ってくれる。あの子たちには、今年もきっとサンタクロースがプレゼントを届けにやって来るだろうと確信した。 |