広報 あぐい
2008.08.01
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あぐいぶらり旅 〜施設かいわいを行く (町立図書館)〜

シリーズ 阿久比を歩く 81

 



本を読む子どもたち



瓦ぶき屋根の図書館

昭和58年7月の開館以来、多くの人に利用される“情報発信の基地”町立図書館かいわいにぶらり出掛けた。

− 徳川家康の生母於大の方は家康を生んだ後、天文16(1547)年坂部城主久松俊勝と再婚。政略結婚のため幼い息子と離ればなれとなる。家康は桶狭間の戦いを控えた永禄3(1560)年、於大の方に会うため坂部城に立ち寄ったと言われる。−

歴史の舞台となった坂部城跡の静かな場所に図書館は建つ。

坂部城跡の石碑が残る城山公園に立ち寄る。「シャー、シャー。シャカ、シャカ」夏の風物詩、セミの鳴き声がにぎやか。タモで木に止まるセミを取る親子の姿がほほ笑ましい。公園の西から図書館の玄関に回る。

図書館の屋根は城跡にちなみ、城を連想させるような瓦ぶき。昭和62年には斜面を生かした小規模図書館として、日本図書館協会建築賞「特別賞」にも輝き、落ち着いた感じのデザインである。

図書館に一歩足を踏み入れる。エアコンの入った館内は実に気持ちがいい。一度に汗が引く。

「暑い夏、外からエアコンの効いた場所に入ったときは、『きたぁー』って感じですよね」。ちまたで、はやりのギャグを交えて友人が話し掛けてくる。私は人差し指を立て、口元に近づけて「しぃー」と注意を促す。

図書館では大きな声でしゃべることは厳禁。友人はそのことに気付き、それからは小声でしゃべるようになる。

絵本や子ども向けの本が並ぶ児童室は、夏休みで子どもたちがいっぱい。読書が自由にできる閲覧室では大人たちが静かに本を読む。窓の外を眺めると公園や竹やぶの緑が取り囲む。雑音の多い社会で、日々忙しく生活を送る人にとっては、ゆっくりと自分の時間が過ごせる「最適空間」だ。

図書館を出る。「『次郎物語』の主人公の勇気ある行動に感動を覚えたし、『黒い雨』を読み終えた後の切なさは何とも言えなかったなあ。ところで君の思い出に残る本は?」と友人に問い掛ける。「恐竜が出てきて、あれですよ。えっと…。書名を度忘れしました」。「どこがおもしろかったの?」。「……」。「本当に読んだの?」。「感想文を書いた覚えがありますから確かに読みました」。友人の額から大量の汗が流れていた。



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