広報 あぐい
2008.06.01
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あぐいぶらり旅 〜境界線を行く (5)〜

シリーズ 阿久比を歩く 77

 



ヘビを捕まえようと
夢中になる親子



結芽木橋付近


今回は名鉄巽ケ丘駅付近からスタート。駅は知多市地内。県道名古屋半田線を横断して商店街を南に向かい阿久比町に入る。境界は県道から少し西にある細道に続き、民家の敷地内にも入り組む。

バラやパンジーなど民家の庭には色とりどりの美しい花が咲く。空は五月晴れで気候は抜群だが、2人とも鼻が“ぐじゅぐじゅ”。敏感な私たちは春先のスギ・ヒノキの花粉に代わり、イネ科の花粉に反応しているようだ。「ハックショーン」。「何か冷たいものが顔に飛んできましたよ」と友人が嫌な顔をする。「ごめん。ごめん。外だから開放感いっぱいでおもいっきりくしゃみがしたくてね。次は手で押さえるよ」。「お願いしますよ。もー」。

田畑が広がる。水田には等間隔に稲が植えられる。目の前の畑では夏野菜が育てられ、紫色したナスのつるが支柱に巻き付く。季節は春から夏への準備が進む。

砂利道を歩く。遠くに幼い男の子とお父さんが小川をのぞき込む姿が見える。タモで何かを捕まえようとしている。

2人に近づき「何かいるの?」と尋ねると、男の子は必死でタモを動かす。お父さんは「ヘビがいたんですよ。この子はなぜだか分かりませんけどヘビが大好きなんです。そうだよなあ」。「うん」。満面の笑みを浮かべながら子どもはうなずく。「頑張って捕まえたら見せてよね」と友人は男の子を激励していたが、ヘビ嫌いな私は小さな声で「じゃあね」と恐る恐る手を振って、その場から離れた。

険しい道を進む。どこへ行っても雑木林、田、畑ばかり。遠回りをして知多市の佐布里地内の道を地図と2人の“感”だけで歩く。

「さっきの男の子に負けじと、ヘビならぬ伝説の生き物“ツチノコ”でも探しましょうか」と友人が冗談のつもりで話し掛けてきた。「今は境界を探すことが最優先だ」。私が命令口調の言葉を返すと、「ラジャー。分かりました」。友人は敬礼をして1歩後ろに下がる。

何とか阿久比町まで戻って来た。2人とも鼻水ダラダラで体調が優れない。結芽木橋付近で今日のぶらり旅を終えることにした。「ハクショーン」。鼻にティッシュを詰めて家路を急いだ。



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