広報 あぐい
2008.04.15
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あぐいぶらり旅 〜境界線を行く (2)〜

シリーズ 阿久比を歩く 74

 



阿久比町と半田市の
境界にある竹やぶの中



田んぼの土手に伸びるツクシ


阿久比駅から名鉄電車に乗り、半田口で降りて、前回歩き終えた高田橋まで戻り、再び半田市との境界を歩き出す。

矢勝川堤防の桜は、ほぼ満開。広がる田園の土手に咲く、菜の花のにおいが風に乗って流れてくる。

阿久比川の上に掛かる島田橋を渡る。境界は川を隔てた南側になる。県道55号線を歩く。

半田橋付近の交差点に、阿久比町と半田市の境を示す標識が立つ。県道南粕谷半田線を横切り、地図や民家の郵便受けの住所を見ながら境界だと思う道を進む。

ほとんどの田んぼは、間もなく始まる田植えに備えて、田起こしが終わり、土がでこぼこに隆起する。あぜ道には雑草が芽吹き、その間からツクシが背を伸ばす。

「子どもたちが摘んできたツクシを卵とじにして食べたんだよね。苦味が少し気になったけど、子どもがせっかく取ってきてくれたから『おいしい』と言いながら食べたよ」と私が友人に話し掛ける。「いいお父さんしてるじゃないですか」。「『おいしい』と言ったばっかりに、子どもたちは、毎日のようにツクシを摘んできて、しばらくツクシ料理が続いたよ」。(笑)

地図を見ながら歩いてきたが、境界と思われる道が地図上では分からなくなってくる。舗装されていない砂利道を行くと牧場にたどり着き、さらに進むと畑が見えてきた。

ついに限界がくる。進む道がなくなってしまう。未知の世界に入り込む。人気のない場所に軽トラックが止められる。「もしかして誰かいるのでは」と思い、探してみると畑で(くわ)を持つ老人の姿が。

事情を話す。81歳になるという男性が「ここからは、もう道はないよ。わしについてきなさい」と言ってくれたので、老人の後に続く。竹やぶの中に入っていく。

私たちは探検家になった気分。友人の顔が少し青白い。「この奥が池だなあ。昔は泳いどった。ここに桃の木があってなあ。この辺りがちょうど、阿久比と半田の境界だ。これ以上あんたたちだけで行くと、帰って来れんかもしれんなあ」。目印も何もない竹やぶの中を、男性がていねいに案内してくれた。

いい出会いがあり、2人では入り込めない場所にも行くことができた。次回、道なき道をどう進んだらいいか不安だが、しっかりと前を見て歩こうと思う。



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