広報 あぐい
2007.09.01
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あぐいぶらり旅
〜阿久比の道を行く(県道白沢八幡線ほか)〜

シリーズ 阿久比を歩く 59

 



峠の“抱き地蔵”



稲穂のガードマン“かかし”


前回歩いた平野橋から阿久比川沿いを北に向かい、県道白沢八幡線(254号線)をぶらり旅した。

日本各地で観測史上最高気温を記録するなど猛暑が続く。「暑いなあ」。「この暑さなんとかならないですかね」。友人との会話は暑さの話題にしかならない。とにかく暑い。阿久比川には大きなコイたちが気持ちよさそうに泳ぐ。水の中で涼しい顔をするコイがうらやましく思える。

知多半島道路の下をくぐり、県道55号線を横断して県道254号線に入り、西へ向かう。田んぼでは、実り始めた稲穂のガードマン“かかし”の姿が目に付く。自分たちを励ます気持ちも込めて「暑い中、ごくろうさま」と声を掛ける。

宝安寺に立ち寄り休憩を取る。「暑い」。「……」。水分補給は十分過ぎるほど取り、腹の中は“チャポチャポ”。境内でセミの声が1匹もしないのがせめてもの救い。流れ落ちる汗をタオルでふく。

再び県道に戻る。民家が立ち並ぶ間を道が続く。緩やかな坂道を上っていく。沿道の柿の木には、緑色した実が付く。「稲穂」しかり、「柿の実」しかり、自然界では暑さの中でも、秋の準備が着実に進んでいる。実りの秋が待ち遠しい。

分かれ道の一角にのぼりが立ち、小さな堂の中に地蔵がまつられている。地蔵のことが気になり、近くの民家で尋ねる。地蔵のある場所は昔の峠で、道しるべの役割を果たす。「右佐布里」、「左草木」と刻まれている。地蔵を抱いて祈ると、願い事がかなうと伝えられ、今でも地蔵を抱く人の姿を見掛けるとのこと。8月と1月の年2回“地蔵まつり”が行われ、近くに住む6件の家が順番で世話をし、まつりの日にはお年寄りや子どもが念仏を唱える。「お参りが終わった後に団子やお菓子が配られるから、子どもたちは毎回楽しみにしてますよ」と話を聞かせてくれた女性が目を細める。

「君もお地蔵さんを抱いて願い事をしてみたら」と友人に勧める。恐る恐る地蔵を抱き、目を閉じて何やら祈っている。「何をお願いしたの?」。「もちろんあのことです。想像にお任せします」。想像は付くのでそれ以上のことは聞かなかった。

知多市の看板が出てきたので今日のぶらり旅を終えることにした。私たちの周りを赤トンボが飛び交う。暑い中、少し秋が見えた。

今回で「阿久比の道を行く」を終了し、次回から「ふれあいマップを歩く」を連載します。



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