前回に続き、西尾知多線(県道46号線)を西に向かい歩いた。
新緑がまぶしく、風はさわやかだ。「松がありますよ」。(前回のぶらり旅で梅と竹に遭遇している)友人が指差す。民家の庭先で立派にせんていされた松を発見。「松竹梅に出会うことが出来て、縁起のいい道ですよね」。「同感だ…」。その後、お互い話が続かず、無言で歩き続ける。
ゴルフ練習場の前を通り掛かる。少しおなかの回りが気になる中年のおじさんたちが“打ちっ放し”に精を出す。私もメタボリック症候群に近いものがある。日ごろ「何か運動をしなければ」と思うが、なかなかできない。一念発起。腰をクネクネ動かしながら“ウォーキングダイエット”を50mほど実行する。
田植えの終わった水田をのぞく。あぜ道の草むらに潜んでいたカエルたちがいっせいに田の中に飛び込む。
「ポチャーン。ポチャン。ポチャ」。水の音が響く。友人が「〈水田や蛙飛かわずび込む水の音〉ですかね。芭蕉になった気分です」と言って、手のひらに字を書くまね事をしている。「うまい」と言って手をたたいてほめる。「最近、夜カエルの鳴き声が気になりませんか。冬の間どこで過ごしていたんですかね」。「えぇ。それ本気で聞いてるの」。「冗談ですよ。池で平泳ぎの練習をするらしいですね」。「……」。
多賀前橋で草木川を眺めていると、地震かと思うような橋の大きな揺れ。私たちの横を観光バスが通り過ぎる。バスの高い座席から物珍しそうに私たちを見る乗客。2人で手を振って見送った。
春の日差しがきついせいか、かなり汗ばんできた。多賀神社の前を通る。ゴール地点となる阿久比町と知多市の境が近い。
坂を上りきると「愛知用水幹線水路」と書かれた看板が目に付いた。その下を愛知用水が通る。知多半島の農業や工業のために使われる水がこの水路1本に集約されている。この用水を造った先人の苦労を、小学校の社会の時間に「のびゆく大愛知」という教科書で学んだ記憶がよみがえる。豊富な水量を見て、先人の苦労を思うと汗が引いた。 |