広報 あぐい
2007.05.01
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あぐいぶらり旅
〜阿久比の道を行く(県道阿久比半田線)〜

シリーズ 阿久比を歩く 51

 



堂にまつられる石像



高田橋から見た権現山


今回は県道阿久比半田線のぶらり旅に出掛けた。

知人に車で高田橋まで送ってもらい、そこから北に向かって歩くことにした。

左手遠方には、緑の森がこんもりと盛り上がった権現山が見える。どこからともなくサクラの花びらが風に舞い、高田橋下の矢勝川に落ちる。淡いピンクの花びらが水面を覆い、緩やかな川の流れに乗り、下流へと進む。満開に咲き誇るサクラも良いが、散ったサクラも“いとをかし”である。

少し歩くと、コンビニエンスストアの駐車場の隅に“堂”を発見。約3mの高さで、1mほどの奥行きと間口の堂の中には、地蔵らしき石造物が安置されている。石像の左右に何か文字が刻まれている。

「何かにおいますね」。「君もそう思うか」少し前のテレビドラマの刑事のような会話を友人と2人でしていると、通り掛かりの男性に「何か探しているの」と声を掛けられる。事情を話すと「ここの家の人なら知っていると思うよ。私が声を掛けてあげるよ」と言ってくれ、堂の西側に建つ家に住む男性を紹介してくれる。

石像は今の場所よりも少し北側に野ざらしで立ち、刻まれた文字は「右よこすか左おおの」と判明。もともと道標だったらしい。堂は明治時代に男性の先祖が建て、この界隈を襲った幾多の水害でも流されなかった。男性は道が広がるときに、石像の所有者を調べたが分からず、先祖が見守ってきた堂と石像を自らの手で現在の場所に移動させた。私たちは意外な事実を知る。「おばあさんが毎日、扉をあけてお花と水を供えています。家族が幸せなのは、そのせいかもしれません」と男性が目を細めた。

北上を続ける。大古根地区の八幡神社下の道はサクラの花びらで“じゅーたん”が敷かれたかのようになっている。今年は花見に行けなかった私たちだったが、今日のぶらり旅は違った角度でサクラの観賞を楽しめたような気がする。

隣から「♪さくら舞い散る道の上で♪」と独唱を始める友人の下手な歌が私の耳に残った。



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