広報 あぐい
2006.08.15
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あぐいぶらり旅 〜村絵図を歩く(稗之宮村 後編)〜

シリーズ 阿久比を歩く 34

 


稗之宮村絵図
(阿久比町誌資料編1村絵図解説書から)


丘陵地からの眺め


轡井戸があったと思われる東中根の田

くつわ井戸”探しのぶらり旅を続ける。

東光寺のクマゼミの鳴き声を後にして、地蔵寺へ向かう。断崖絶壁の下に細道がくねくねと続く。道は丘陵地にあるため、眺めは絶景である。

道は、絵図に地蔵堂と記された現在の地蔵寺に続く。

地蔵寺も小高い場所にこぢんまりと建つ。境内に弁才天と庚申がまつられた小さなほこらがある。2つとも村絵図に記されている。明治以後この場所に移されたらしい。

私たちが境内をうろついていると、女性の住職が声を掛けてくれる。村絵図を見ながら歩いていることを説明する。無理を言って寺にあがらせてもらい、本尊の地蔵菩薩を見せてもらう。

木造で高さ1メートルほどの地蔵菩薩。住職の話によると、記録が残っていないため詳しいことは分からないが、約400年前に造られたとのこと。全体が黒色で背が高く、スマートな“地蔵さん”である。

轡井戸について住職に尋ねる。「私は出身が名古屋だからねぇ」と言う答えが返ってくる。がっかり肩を落して次へ向かおうと絵図を見る。「ごくろうさまね。冷たいものでもどうですか」と缶コーヒーを勧めてくれる。遠慮なくごちそうになる。よく冷えた缶コーヒーを額に当てると、とても気持ちがいい。一瞬、汗が引く。缶コーヒーを一気に飲み干し、疲れが取れる。気分を一新したところで最終目的地を目指す。

轡井戸について阿久比町誌村絵図解説書には「阿久比字東中根にあった。この井戸は、源義朝家臣渋谷金王丸の轡洗い伝説がある井戸である。現在は取り壊されて田になっているが、今でも井戸のあった所からは清水がわき出すために稲が実らないといわれている」とある。

阿久比公会堂の前を通り、地図を見ながら東中根付近の田を探す。墓地から北東の方角に田を発見。

マムシが出そうな草道を下へ降りる。田に張られた水は、ほかの田に比べると水量が多いような気がする。解説書どおり清水がわいているのだろうか。「この辺ですよね」自信のない友人の声。「絶対そうだよ。間違いない」私は意味もなく友人に握手を求めた。

伝説の地は最終的に確認できなかた。残念。私たち自身が何か伝説を残せるように、田の脇を流れる水路で手を洗い、帰途に就く。



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