広報 あぐい
2006.08.01
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あぐいぶらり旅 〜村絵図を歩く(稗之宮村 前編)〜

シリーズ 阿久比を歩く 33

 


稗之宮村絵図
(阿久比町誌資料編1村絵図解説書から)


阿久比神社東側の森


東光寺山門

稗之宮村(現在の大字阿久比地区)絵図を見ながらぶらり旅に出掛けた。

先日、東京都渋谷区郷土博物館の学芸員が最勝寺(卯之山)に伝わる、渋谷金王丸が馬の口に付けたと言われるくつわを調べにきていた。私も同席させてもらい轡を住職から見せてもらった。

渋谷金王丸は平治2年(902)野間で殺害された源義朝の家臣で、主君の義朝の首が京に送られるのを知り、首を取り返そうと京に向かうが、馬が病で倒れ進むことができなくなる。轡を井戸で洗って、「古見堂地蔵」(現在、最勝寺蔵)に献じると、馬の具合が良くなり、再び京を目指したという伝説が残る。

稗之宮村絵図の中央から南の部分「轡井戸」の表記がある。今回は轡洗い伝説の地を最終目標に進むことにする。

最初に氏神と記された場所を訪れる。現在の阿久比神社である。この神社は平安時代初期の朝廷の記録が書かれた『延喜式第九・第十』の中で、全国の神社を紹介する神名帳に南知多町の入見神社、羽豆神社とともに「智多三座」として記載されている。

境内の東の方には、細い参道が続く。昨日の夜、雨がたくさん降ったせいか、木の葉から“ポトン、ポトン”と水滴が落ち、顔や首筋に当たる。蒸し暑いため、この1滴、2滴のしずくが一瞬体を冷やし気持ちがいい。

南へ向かって歩く。草取りをする女性に出会う。「轡井戸」について何か知らないか尋ねてみる。「ごめんね。嫁いできて40年経つけど、聞いたことないね」と女性がニコニコしながら応えてくれた。「がんばって探してね」と励まされる。

見上げるほど高い場所に東光寺の山門がある。とても急な石段を上っていく。途中で友人がぼそっと「ところで、轡って何ですか」と私に尋ねる。「えっ…」、絶句。(先ほどまで普通に会話し、うなずいていたのはどういうことだ。)

恥ずかしいことに私も知らなかったので先日、学芸員に聞いた話を説明した。(轡とは口輪の意。馬の口にくわえさせておき、手綱をつけて御するのに用いる金属製の具。『広辞苑』から。)

東光寺境内には今年初めて聞くクマゼミの鳴き声が響き渡っていた。

轡井戸探しのぶらり旅は次回へつづく。



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