広報 あぐい
2005.06.01
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あぐいぶらり旅〜知多四国八十八カ所 弘法参り

シリーズ 阿久比を歩く 5

樫木山 観音寺
地図

観音寺の本尊は十一面観音菩薩で、浄土宗に属する。
創建は不詳で善随大和尚が開基とされる。
寺伝によると、観音寺は樫木田村にあったものを高岡村に移したといわれている。
文亀2年(1502)の文書『英比谷虫供養縁起記』に、古来念仏虫供養講番の22カ村の順が定められている。その中に炊田村があり、樫木田村を炊田村ともいったことから、その時代には観音寺が創建されていたと考えられる。
寺に保管されている鰐口(仏堂正面の軒下につるす金属製の音響具)には、元禄2年(1689)に高岡村人から、この鰐口が奉納されたと記してあることから、元禄年間に現在地に移ったといわれている。

鳳凰山 平泉寺
観音寺本堂
 

平泉寺の表門から下った所にある唐松の井戸(慈覚大師円仁の祈とうにより水が湧き出し、農民を日照りから助けたと伝えられる井戸)をのぞき、角前田の交差点を渡り、西に向かって第十七番札所、高岡地区の観音寺を目指した。
県道は車の通りが多い。交通安全に気を付けながら歩を進めると、弘法寺を示すのぼりが見えた。矢印に沿って細道に入った。間もなく見上げるような石段が目の前に現れた。
小高い丘の上に観音寺はある。石段を1段1段と登り始めた。半分くらいまで登った所で、ふと「何段あるのだろうか」と思い、もう一度下に戻って数えることにした。かなり険しい急な石段で、運動不足の私たちにはつらい。「はあー、はあー」息が切れた。74段あった。
登りきった場所から、後ろを振り返って見る。目の前に植大地区の住宅や田園風景が広がる。
一礼して境内に足を踏み入れる。今まで巡った中では一番小さな寺に感じられ、正面に本堂がひっそりと建っていた。幼い子どもが2人、堂の前で手を合わせて何か願い事をしている。とてもほほえましい光景が目に映った。
あいにく住職は留守だったが奉納経に朱印を押してもらい、話を聞いた。この寺の住職は、知多四国で3人しかいない女性の内の1人だそうだ。せっかくの機会だったのに会えなかったのがとても残念。
寺の中を見せてもらった。欄間に金箔が施された立派な彫刻がある。今にも飛び出してきそうな、躍動感あふれる「竜」の彫り物。山車の彫刻で知られる 彫常 の作品だそうだ。
「山車の彫刻は1年に1度しか見えませんが、ここに来てもらえば毎日見えますよ」と副住職。
本尊の十一面観音菩薩は50年に一度しか開帳されない秘仏ということだ。平成11年に開帳した際には「仏自体は真っ黒でした。目元が厳しく、目から光線を放っているような神秘的な顔でした」と副住職が感想を語ってくれた。次回開帳のときにはぜひ見てみたい。(元気ならば私は82歳になっていると思う)
観音寺の境内を出て、74段ある石段を下り、来た道を通り役場まで戻った。前回に比べれば、体力がついたのか、足の疲れは少なかった。(やはり翌日筋肉痛)

 


本堂に手を合わせる子ども



朱印をする副住職



石段最上段から見える田園風景

(参考資料 阿久比町誌、あぐいのあゆみ、広辞苑)

町内五つの弘法寺を春の訪れとともに、友人2人で歩いて巡ったぶらり旅。どの寺も取材に快く応じてくれた。貴重な文化財もたくさん自分の目で見ることができた。今まで知らなかった あぐい も再発見できた。

 

「知多四国八十八カ所 弘法参り」のシリーズは今回で終了します。次回からは「阿久比ぶらり旅 自然を求めて」を連載します。



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